素顔の清流
調査結果のまとめ

〜 年間総括と今後の課題(平成14年度) 〜
2002年5月〜2003年2月

  1. はじめに
     平成15年5月から流域住民の方々にご協力をいただき始まったこの調査の1年間の総まとめとして、今後の宮川清流づくりに生かせることを期待しながら協力いただいたスタッフのデータに基づいた年間総括とします。
     なお、水環境調査のいっせいチェックに関した「調査の目的」・「実施体制」・「調査内容、方法」等については、すでに宮川流域ルネッサンス協議会から既刊広報等で紹介されているのでここでは省略させていただきます。調査事項等[パックテスト(5種)]については、大勢の人が同時に調査でき、簡単な化学分析法として誰でも、どこでも、手軽にできるという長所もありますが、濃度の読取りに個人的な誤差が生じる、細かい数値の読取りが困難、特に河川や湖沼では誤差を生じる妨害物質が多い、など欠点もあるため、公式の測定値としては認められてはおりませんが、私達の身近にある河川の汚染状態を知り、改善の方法等を考える上で、住民によるこの調査が大変重要であることを再確認し、問題意識をもち清流を取り戻しましょう。
     以下、調査スタッフの方々が調査していただいたデータを基に四季を通じてどのように水質が変化しているのか、各河川別に分けて考察とその問題点を列挙することとします。各月別等の観測結果はホームページに記載されているので、参照していただければ幸甚です。


  2. 各河川別による考察とその問題点
    (1)宮川本流の上流
     上流域においては、宮川ダム湖・各支流・宮川本流・三瀬谷ダム湖等の調査地点があり、5項目の調査項目のデータ値からはあまり問題点とする数値が見あたりませんが、本流(大杉谷)地点で1ヶ所COD値が高値を観測した月がありました。これは、降雨による増水のためによる観測地点が危険なため、溜り水(水の停滞地)の採取による観測であったと聞いております。pH値については、夏季と冬季とはどの河川も微妙な差が観測されております。大半は中性のpH7前後でした。夏季は弱酸性が観測され、冬季には弱アルカリ性の数値が観測されています。
     上流域における問題点としては、水量の減少が河川の浄化能力を低下させている点です。また、大雨による増水は鉄砲水となり、濁り方もひどい状態になります。このことは、山の樹木による保水力との関係があると思われます。
     広葉樹林であればこのような減少は緩和されるのでしょう。
     生活排水についても、各家庭では、合併処理施設も行政の援助により少しずつは改善されてきてはいますが、大半の家庭では、河川に流れていく過程で浸透していくようですので生活排水による汚染は少ないように思えます。
     川環境は全体としては年間を通じて良好な状態を維持しています。ただし、コンクリート護岸化が進んでいる地域もあるようで、護岸の必要性や護岸の方法など議論すべきではないでしょうか。
     宮川ダムのダム湖は天候の変化によってゴミや濁りなどの変動が他の上流部の地点より激しいですが、これは上流から流れてきたゴミや濁りのもとになる土壌の微粒子が流下せず溜まるためと思われます。

    (2)大内山川
     10ポイントの調査地点のうち、2地点では夏季においてCOD値が7〜8(mg/l)以上が観測されている。この夏季のCOD値については、河川の増水による濁り等との関連もあるのではないでしょうか。その他の地点では、四季を通じて0、2、4値の結果が多くみられました。他のパックテスト項目も0値に近い数値ばかりでした。河川の状況については、「濁りが少しある」と観測されている地点も夏季にはみうけられているが、冬季には少ない。このことは、降雨との関係があります。この河川も宮川上流と似た状況で、水量の少ないのが河川浄化上の問題点であることにはかわりはないのではないかと考えられます。
     夏場は、釣りやキャンプなどで川の岸辺に入る人が多くなり、ゴミの量も増えます。そのゴミは、増水時に流されたり逆に溜まったりします。一般に、増水すると上流部のゴミは減り下流部は増加するようです。

    (3)宮川本流の中流
     17ポイントの調査地点がありますが、どの地点においてもpH値は四季を通じてpH7〜pH8.5値の範囲で安定した数値が観測されています。COD値については、8mg/l以上の地点も数カ所観測されています。大半の地点では、0〜4の数値が四季を通じて安定してはいますが、夏季においてそのCOD値が高値をしめているのが気がかりです。調査記録からみるかぎりでは、調査地点の上流での遊泳、レジャー客の川遊びが原因ではと記録されていました。また、この流域では月別による観測データ量の不足もあり、考察しにくい点もあげられます。
     ゴミについては大内山川と同様な傾向がみられます。流れ着くゴミとしては、ビニール袋類が多いという結果でした。

    (4)藤川
     3ポイントの調査地点があります。pH値は7〜8.5値の範囲で四季を通じて安定しているようです。COD値も0値の観測月多く、最高値でも4値という数値である。他の調査項目も0値近い数値が観測されていて自然浄化能力も比較的良好の河川ではないかと推測できます。数値からみるかぎりでは四季による変化や特質が見られない河川である。
     12月以降のデータが少ないため判断しにくい面もありますが、年間通じてゴミも少なく安定した河川環境を維持しています。

    (5)注連指川
     1ポイントしか調査地点がありませんが、pH値は6〜8値・COD値も0〜2値の範囲であり、他の項目も0値に近い数値が観測され安定した川です。記録から判断する限りでは、この河川は四季を通じて美しく、きれいな清流であることがうかがえます。
     流域の河川環境も良好です。

    (6)濁川
     2ポイントの調査地点です。データは2地点とも5・6月分のみのため、判断材料としては不足ですが、この2ヶ月分のみで考察するかぎりにおいては、調査項目中これといった特筆すべき問題点は考えられません。
     流域の河川環境も悪くないと思われます。

    (7)一之瀬川
     5ポイントの調査地点です。その内1地点は5・7月分のみのデータですが、項目別のデータ結果から見ても他の地点との相違はあまりないようです。pH値は四季を通じて6、65〜8値の範囲でした。COD値については、0〜8値以上が観測されており、特に夏季の7月と9月に8値以上の地点があります。冬季は安定した値が観測されています。この河川は、夏季と冬季のCOD値の差が大きい特徴を持っていることが観測数値から判断されます。
     いわゆる水中有機物の分解速度は、夏季と冬季では、大気の状態、気温や太陽光の強度等により大きな差があり、夏季と冬季の水量差等も影響しているものと考えられます。
     他の調査項目については特に特筆すべき問題点は見当たりません。
     岸辺のゴミがやや目立つ地点が多く、また、河川の周囲の景観も悪化しているようなので注意して見ていきたい河川だと思います。

    (8)宮川本流の下流
     9ポイントの調査地点が、度会町から宮川河口近くまでの広範囲に散在している流域です。夏季、冬季区別なくpH値は7〜9値の範囲で、中性から弱アルカリ性が観測されている。
     COD値については、各地点において数値にばらつきが見られます。
     下流の上部域度会町内の流域では、夏季・冬季ともにCODが0値から4値の範囲ですが、サニーロード下の地点では6値〜8値以上の数値が観測されています。これらの地点は冬季は2値〜4値ですが、夏季においては8値以上が観測されています。河川は下流にいくほどその汚れが目立つことが、これらの数値からも言えるのではないでしょうか。
     その他の項目には、特筆すべき数値は見当たりません。
     上流から流れてきたビニールゴミが、河川敷の樹木に引っ掛かったりして見苦しい場所もあります。「桜の渡し」など河川敷の公園は比較的きれいになっていますが、河原のゴミも何とかしたいものです。

    (9)横輪川
     4ポイントの調査地点があります。pH値は7〜8値と安定していますが、地点により5月、10月には8.5値と9値の弱アルカリ性の水質が観測されています。これらは最上流部の調査地点の結果ですが、この観測時間帯内で河川工事がされていることが記されていました。
     CODについては、この時期の数値も8以上と高値ですが、他の月も8値以上が観測されているのは水質上問題ではないでしょうか。これに加えて特に7月の観測値ではアンモニア濃度1、6mg/l値であり、この原因が何なのかが課題として残ります。
     他の項目は正常値でした。
     全体として川環境は良好ですが、横輪と矢持の間にある土石の採取場付近は景観も悪く、土石が河畔の樹木を倒して川に流れ込んでおり、改善が望まれます。

    (10)外城田川
     3ポイントの調査地点があります。pH値は6.5値〜8.5値の範囲でした。COD値は2値〜8値以上と変動が激しいように思われます。
     人口の多い生活圏内の河川ですので、調査地点や調査時間帯と生活排水流入パターン等の関係等について検討すべき河川ではないかと思われます。他の項目については、問題点はみられません。
     住宅地や農地を流れてくる川であるためか、年間通じて岸辺にゴミがやや目立つようです。

    (11)汁谷川
     3ポイントの調査地点です。pH値は6.5値〜8.5値の範囲ですが、観測値から推測し月別に判断すると、6.5値の月がどの地点でも多いようで弱アルカリ性の水質であることがわかります。
     季節により、COD値は0値〜8値以上とその変動幅は大きいようです。冬季は水量が非常に少なく、自然浄化能力等にも課題があるようです。
     他の項目には、特筆すべき事項は見当たりません。
     農地と住宅地を流れる河川でありゴミがやや目立ちます。興味深い水生植物が生育する河川でもあり、環境の変化に注意していきたいものです。

    (12)勢田川
     7ポイントの調査地点です。pH値は7値〜9値であり、中性から弱アルカリ性の水質です。夏季、冬季にかわらず、7.5値〜8.5値の範囲が多い河川です。地点により差異はありますが、COD値は8値以上の地点が多く、アンモニアについても月別、地点により差異はあるものの、5月には4mg/lという値が観測されており課題のある河川といっても過言ではないでしょう。他の項目についても他の河川よりは高濃度であることが報告されております。
     ただ当河川は、夏季・冬季の間でそれほど大きな変化はないように思われます。
     今回調査した5項目のパックテストでは、データの変化が河川の自浄作用(浄化作用)がどの程度あるかを示すといわれております。この自浄作用には河川により限度があります。勢田川のような河川においては、一定以上の汚染物質が入ると河川だけの自浄作用だけでは汚れを分解することができなくなります。従ってその河川は汚れてしまいます。 
     今後自浄作用を高めていく努力が大きな課題であります。
     ゴミや油膜、にごりなどの状況は、天候、時刻などによって変化しますが、全体としてはやはり良いとはいえません。特に下流ほどよくない状況でした。

    (13)五十鈴川
     4ポイントの調査地点です。pH値は7値〜9値であり、中性から弱アルカリ性の水質です。COD値は0値〜4値の範囲であり、1地点で10月に6値という数値が出ていますが、全体としては落ち着いた清水であろうかと思います。他の項目も安定した数値が出ておりますので、この自然環境をいつまでも守りたいものです。
     川環境では、岸辺のゴミが目立つ地点が多いことと、川の周りの様子が5から1に落ち込んだ地点があることが気になります。

    (14)桧尻川
     3ポイントの調査地点です。pH値は7値〜8.5値であり、1地点のみ9月の数値が6.5値を観測しています。COD値も高く8値以上がほとんどです。観測地点で差異はあるものの他の項目のアンモニア・亜硝酸値ともに同一地点でも比較的数値に変動がみられます。

    (15)ほどす川
     1ポイントの調査地点です。pH値は7.5値〜9値であり、弱アルカリ性の水質です。COD値も8値以上と年間を通じて高濃度を示しています。また、アンモニアについても1、6値以上8値という高い数値が観測されています。
     生活圏内にある河川ですので検討すべき課題のある河川といえます。
     川環境についても、年間通じてゴミ、油膜、におい、濁りが観察され、川の周りの様子も悪く、岸辺のゴミも多い川という結果でした。

    (16)相合川
     2ポイントの調査地点です。pH値は7値〜9値でした。四季に関係なく弱アルカリ性の水質です。地点により異なりますが、COD値は2値〜8以上の観測値がでていました。なお一部、データの読み違いがあるようでしたので、その該当月の観測値は除いて考察としました。
     他の項目については安定していますが、1地点の8月の観測値は、亜硝酸値が急な上昇を示しているのが気になりました。7月が0、05mg/lで、8月には約8倍の0、4mg/lを観測しています。
     年間通じて岸辺のゴミが目立つ川ですので、流域住民への啓発活動をおこなうべきであろうと思われます。

    (17)馬瀬川
     1ポイントの調査地点です。いずれもPH値は7値〜8値の範囲ですが、COD値は6〜8値以上と高い数値が観測されており、アンモニア値も0、8〜1、6mg/lという数値でした。他の項目は安定した値が観測されています。

    (18)朝熊川
     1ポイントの調査地点です。すべての項目について安定した値が報告されていました。ただ、5月のCOD値のみ、8値と高い値でした。

    (19)清川
     1ポイントの調査地点です。pH値は8値〜9.5値以上の範囲であり、COD値は4値〜8値以上の数値でした。工事による影響もあるのではないかと記されていますが、他にも何か原因があるのではないかと考えられます。また、アンモニアの数値も月により差異はあるものの比較的高い濃度の数値が報告されています。リン酸値も同じ傾向を示していました。

    (20)朝川
     2ポイントの調査地点です。pH値は7値〜8値の範囲で推移しています。COD値は4値〜8値以上の数値でした。調査票には「生活排水の流れが気になった」と記されておりました。他の項目については、特筆すべき事項は数値からは考えられませんでした。

    (21)亀谷郡川
     1ポイントの調査地点です。pH値は7.5値〜8.5値の範囲であり、COD値も、5月の8値以上という数値を除き、1値〜4値の範囲で推移しています。他の項目は安定した数値が報告されていました。


  3. まとめ
     1ヶ年間ご協力をいただいた方にまずもって御礼を申し上げます。
     前記のように、各河川別に検討をいたしましたが、中には間違った判断もあろうかと存じますが、浅学の上素人の分際ですのでお許しを願いたいと思います。
     我々住民には、この宮川の清流を守っていくという大使命感を忘れることなく、これからもコツコツと焦らずに、地道に活動の輪が住民みんなに広がってゆくように、その意識付けをどのようにしていったらよいのかを考えていきましょう。
     最後になりましたが、宮川の水質の根本問題は何といっても本流、支流を含めて、「水量」の問題が大きく左右するということです。保水力がなくなった山林の形態が、今後大きな課題として浮上してくるのではないでしょうか。         
守ろう清流!宮川流域いっせいチェックワークショップ


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